BIR: 紙の動物園/ケン・リュウ
紙の動物園/ケン・リュウ(翻訳:古沢嘉通)
- amazon: 紙の動物園
あらすじ
※ Amazonより抜粋
ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた…。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人乗組員が穏やかに回顧するヒューゴー賞受賞作「もののあはれ」、中国の片隅の村で出会った妖狐の娘と妖怪退治師のぼくとの触れあいを描く「良い狩りを」など、怜悧な知性と優しい眼差しが交差する全15篇を収録した、テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭がおくる日本オリジナル短篇集
感想
今まで読んでいなかった自分、おそすぎる!!!!もっと早めに読んでおけばよかった!!!(ずっと気になってはいたが、ちょっとお高くて手がでてなかったのだ……)
本当に、めっちゃ良かった。めちゃくちゃいい、100点満点中5億5千点。すごい。ケンリュウ氏の小説を読まずして死ねないと思ったレベル。 なんの情報もまずは入れずに読みたいとおもい、氏の経歴や何もかも全部知ろうとしないよう努めてきたが、それも本当によかった。
読んでる最中ずっと「この人天才では?」ばっかり考えていたが、がちで天才、いや天才とかいう言葉すら失礼なのでは?とおもう程。 SF作家であり、短編も今回読んでほんとすごいのはアレだが、長編も書いてらっしゃるそう(絶対読む)、弁護士なうえ、アプリ開発者でもある。そのうえ中国SFを翻訳までしていらっしゃるそう! そして、なんと・・・・書けばかくほどアイデアが湧く→ポジティブなエネルギーになる→いい作品が生み出せる、とのこと・・・・。 え、超人か?超人OF超人か?
最初に当該タイトルにもなった作品をバシーンともってくる、いい意味でとてもウェット。SF自体そこまで読みまくっているわけではないが、数少ない私のSF読書体験の中でもかなりウェット。 SFにそういったイメージがなかった私は驚いてしまった。 ここでかなりぐっと引き込まれた。すごい、なんか新しいぞ、この短編集、終わってほしくない(と思いながらずっと読んでた。すごい短編が入りまくってて感謝しかない。古沢嘉通さんありがとうございます)
基本的にSFを読むと「私は多分相当に理系ではないので、理解できないから少しさみしい(なんだか置いていかれた気分、理系の脳を持ちたかった、もしくはもっと養わねば)」という気持ちにさせられることがよくある。 この感覚も大層気に入っているので、SF読むのも大好き。 この本を読んで思ったことは、また違った。 「この人はなんて言葉を大事にしているのだろう。そして、漢字がわかって、そしてその美しさを知っていて、私はラッキーだ!こんなにこの本を楽しめる!!!」 そう思った。 例えば、小説でも、三浦しをん氏の『舟を編む』などを読んだとき、たくさんの人が「言葉が好きなのだなこの作者は」と思うように感じる。三浦しをん氏は書かれる言葉もとても面白い。踊るような小説を書かれる。憧れの早稲田文1を出てらっしゃるし、なんだかそれは腑に落ちるというか、いい意味で、その気持になるよね、わかる、わかりみって感じだ。 だから例えば三浦氏の本とかは、読む前から「きっと、言葉っていいなとか、文学っていいなと感じさせてくれるだろう」とわかっている感じがある。 その点今回はそんな事考えもしなかったので、驚いた。SFを読んでこんな気持ちにさせられるなんて!という驚き。これは意外でとても良かった。
そういったギャップ的な、驚きからくる面白さ・興味深さはもちろん嬉しい誤算だけれど、それだけじゃない。当たり前だけど、それだけじゃない! 単純にすごい!面白い!!! よくある良い短編集の特徴の「全部が少しずつ繋がってる感覚」も勿論あった。 一つ一つの作品に、それぞれテーマがある。けれど全てが繋がっている感覚。 そして何より根底にある『人間讃歌』 人間性、Humanityを重んじている人の書いたものだという感覚。 最高に良かった。もう読むしか無いこれは。まじで。ほんとに・・・・・・・・。
『1ビットのエラー』にこだわりをもっていたというお話(翻訳者:古沢嘉通氏より) すごく素敵だとおもった。 機械・プログラム・無機物と信仰・愛・感情のような、異なるものを対比・比較させて、水と油のように見せている、そしてそれを文学にしている。 しかし水と油なのであろうか、本当はそんな風に対立させて考えるものではないのではないか。 これは、最初読んだとき、すごくTherapeuticな話だと思った。最後に翻訳者の解説を読んで、なんと!これが(ほぼ)処女作なのか?!と、なんだかすこしだけケンリュウ氏のことを身近に感じてしまったりした。
そんな感じで、読んでる最中も、読んだあとも大変楽しかった。色々な考えが出て分析・考察したり、自分と対話できたり、様々な楽しみをもらった。 読めてよかった。今後は原文でも読みたい。作者が書いた言葉そのもので読みたいなと思わされた。 翻訳者の古沢嘉通氏のものも素晴らしかった、とても読みやすく、ここぞってときのルビも良かった、ありがたい。
メモってた抜粋
“他人を批判するのは、生き延びる必要のなかった連中の贅沢だ”
この本を読んで、今後もっと掘りたいなとおもった物・事象(私的メモから)
- 228事件
- https://ja.m.wikipedia.org/wiki/梁山伯と祝英台
- テッド・チャン氏の短編及び長編(ずっと読みたいと思っていたがこれまたちょっとお高くて手が出てない。機会をみつけて出す)
- 三体(1,3をケンリュウ氏が翻訳している
- これもいつか読もうと思っていただけに、俄然興味!
あーーーー!編み物しながら本だけ読んでたいなーーーー!!!!wwww